ソウルの超密集
29日、ソウル・梨泰院の路地で起きた155人死亡の惨事。その痛ましいニュースに接して、思い出す光景がある。1987年秋の韓国。軍事政権から民主化へ、時代が移る象徴のような直選制大統領選挙戦を取材していた時のことだ。
盧泰愚、金大中、金泳三、金鍾泌の1盧3金の4候補らがつばぜり合い。それぞれが100万人集会、50万人集会と銘打って全国主要都市で立会演説会を開いた。日本では選挙でなくても、100万人が集まるイベントなどそれまでぼく自身、経験したことがなかった。100万、50万というのは主催者の希望人数であって、実際にはそんなに集まらないだろう、とタカをくくっていた。
ところがどっこい、ソウル・汝矣島広場、光州の道庁前広場などに行ってみると、いや、驚いた。本当に雲霞のように人が集まり、50万、100万がうそではないと気づいた。

▲1987年秋の韓国大統領選挙戦。全国主要都市で開かれた個人演説会には動員を含め100万人規模の人が集まったが、密集による大きな事故はなかった=写真は喜多撮影。上が全羅南道光州市、下がソウルだったと思う
会場に通じる広い道路からも、狭い路地からもどんどん人が押し寄せる。そして演説が始まる前からステージの周りにはぎっしりと支持者が座り込んで、11月の屋外というのに、熱気で暑苦しいくらいだった。
会場のキャパシティを超える支持者が押し寄せるとき、だれかが躓けば、倒れて折り重なる事故が起きても不思議ではない密集状態になることもあった。
そんなとき、必ずどこからか大きな声でシュプレヒコールが始まる。
「チルソ、チルソ、チルソ」。 その声が大きく広がっていく。
ソウルに来た頃はそれがどういう意味だか分からなかったが、先にソウルに駐在していた記者仲間に教えてもらった。「チルソ」は漢字で書けば「秩序」となる。冷静になって秩序を保とう。という呼びかけであり、その声に和して「チルソ、チルソ」のコーラスが広がっていく。
単独候補の演説会に対抗候補の支持者が紛れ込んでヤジったことがきっかけになって、小競り合いが起こることもある。そんな時にも、どこからともなく「チルソ、チルソ」のコーラスが巻き起こった。
あれから25年。惨事に至る前に、「チルソ、チルソ」コーラスが巻き起こる余裕もなかったのだろうか。
盧泰愚、金大中、金泳三、金鍾泌の1盧3金の4候補らがつばぜり合い。それぞれが100万人集会、50万人集会と銘打って全国主要都市で立会演説会を開いた。日本では選挙でなくても、100万人が集まるイベントなどそれまでぼく自身、経験したことがなかった。100万、50万というのは主催者の希望人数であって、実際にはそんなに集まらないだろう、とタカをくくっていた。
ところがどっこい、ソウル・汝矣島広場、光州の道庁前広場などに行ってみると、いや、驚いた。本当に雲霞のように人が集まり、50万、100万がうそではないと気づいた。
▲1987年秋の韓国大統領選挙戦。全国主要都市で開かれた個人演説会には動員を含め100万人規模の人が集まったが、密集による大きな事故はなかった=写真は喜多撮影。上が全羅南道光州市、下がソウルだったと思う
会場に通じる広い道路からも、狭い路地からもどんどん人が押し寄せる。そして演説が始まる前からステージの周りにはぎっしりと支持者が座り込んで、11月の屋外というのに、熱気で暑苦しいくらいだった。
会場のキャパシティを超える支持者が押し寄せるとき、だれかが躓けば、倒れて折り重なる事故が起きても不思議ではない密集状態になることもあった。
そんなとき、必ずどこからか大きな声でシュプレヒコールが始まる。
「チルソ、チルソ、チルソ」。 その声が大きく広がっていく。
ソウルに来た頃はそれがどういう意味だか分からなかったが、先にソウルに駐在していた記者仲間に教えてもらった。「チルソ」は漢字で書けば「秩序」となる。冷静になって秩序を保とう。という呼びかけであり、その声に和して「チルソ、チルソ」のコーラスが広がっていく。
単独候補の演説会に対抗候補の支持者が紛れ込んでヤジったことがきっかけになって、小競り合いが起こることもある。そんな時にも、どこからともなく「チルソ、チルソ」のコーラスが巻き起こった。
あれから25年。惨事に至る前に、「チルソ、チルソ」コーラスが巻き起こる余裕もなかったのだろうか。
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